九州あちこち歴史散歩★綾雛山まつり(2)                      サイトマップ

綾雛山まつり(2)

  綾雛山まつりは今年は2月26日〜3月6日の間開かれました。
まず、綾町の中心街の展示場を見てまわりました。
どこの雛山も桃などの盆栽の花木を埋め込み、滝や川などの風景を作り、全面が苔で覆われています。あちこちに竹の子やつくしなどが頭を出しています。
綾町は宮崎市に隣接し、平野部分には近郊農業のビニールハウスがずらりと並んでいます。町の背後には日本一の照葉樹林帯の里山、深山を擁しています。

「雛山まつり関係者一同」のメッセージ(概略)
「綾町は「自然との共生」による「自然生態系の町」を目指しています。
 雛山を作る私たちも里山の人たちと協力して苔を準備しますが、苔を採る人たちは自然を大変よく知っています。自然に対して常に感謝の気持ちを持ち、根こそぎ乱獲することは決してしません。採る場所も毎年変えています。
 この一月には南九州大学から専門の先生に来ていただき、苔に関する勉強会も開きました。これからもいろいろな角度からひな山を見つめていき、自然との共生を皆で考えてまいりたいと思います。
 どうぞご理解いただきますようお願い申し上げます。」
 
自然との共生のもとで森の恵みを分けてもらい、綾の豊かな自然をずっと残して欲しいですね。



熊須碁盤店展示場(このページの雛山はすべて熊須碁盤店のものです。)
横巾が9メートルもある雄大な雛山です。今年の綾の雛山で最大だそうです。
熊須碁盤店は綾町の中心街からやや離れていたので(それでも歩いて10分程度の距離ですが)寄ろうかどうか迷っていたのですが、寄って良かった!です。規模が大きいだけでなく、草木の一本一本にまで気を配ってある力作でした。



右側のひな壇は現代風に男雛が左に並んでいます。



左側のひな壇は昔風に並んでいます。




雛山のテーマが説明されていました。
宮崎は去年から今年にかけて災害が続き、観光客も減っているようです。
一日も早く活気を取り戻して欲しいですね。



これだけの山の風景を作るには大変な労力が必要だったでしょうね。
碁盤店の4人の息子さんが中心になって、みんなで力を合わせて作っているそうです。
毎年、年末までに雛山のテーマや風景の概要を決めて、1月になると毎日仕事が終わった後に、作業場内の雛山を置く展示場のスペース作りや材料集めを始め、祭りの直前2,3日は終日総勢15人程で雛山を作るそうです。
この雛山は高さ1mの木製のステージの上に、焼酎コンテナ300箱を使って立体的な情景の基盤を作っています。大変な作業ですね。



ひな壇の左側にイノシシが隠れています。
雛山の中央にいるワシはこのイノシシを狙っているのだそうです。



水仙が咲いています。
草木は植木鉢に入れたまま埋めてあります。
雛山の草木、苔には毎日2時間ほどていねいに水をやり、祭りが終わったら苔は山に戻すそうです。
私は、ひな祭りをやるなら3月一杯やればいいのに、と思っていましたが、このように生きた草木とのコラポレーションなので、開催が一週間前後だけになるのは無理もありませんね。



牡丹も美しい花を咲かせています。
温室で育ててこの時期に咲かせているそうです。



中央には滝が流れ、吊橋が架かっています。橋は照葉大吊橋でしょうね。(本物の照葉大吊橋は今年(2011)秋まで架け替え工事中です。)
滝の上のワシが隠れたイノシシを狙っています。



この範囲だけでも10種類以上の草木が生えているように見えます。
左端には大きな木が立っています。さすが木材を扱う店ですね。タブの木だそうです。
この店の息子さんはこのような立体的な情景を作るのは得意かも知れません。碁盤の脚を手彫りで作る職人は全国に3人しかいなくて、そのうちの一人がこの店にもおられ、息子さんたちも修行をされているそうです。
木彫などには設計図面はなく、自分の頭の中で立体的なイメージを思い浮かばせることのできる立体的な感覚が必要になります。榧の木の瘤や木目を見て、どのように最善の碁盤を切り出すかは名人でないとできないそうです。仕事柄、立体的な感覚は鋭いのでしょうね。



牡丹の後ろの梅の木は、「桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿」の格言に従って息子さんがどんどん枝を切ったそうですが、「切りすぎて貧弱になってしまった!」と嘆いていました。





野原ではお雛さまが集まってお供えの餅を作っています。



私は以前、鉄道模型のジオラマ(立体の情景模型)を作ろうとして、鉄道のレイアウトを決め、畳一畳大のベニヤ板と機関車、レールなどを買いこみました。山やトンネルもあり、自然一杯のジオラマになるはずでした・・が、結局完成しませんでした。
作った後にそれをどこに置くのか、我が家にはそんなスペースはなかったのです。(最初に考えればよかった・・)

作りたかった山のジオラマの何倍もの規模の山が、それぞれの展示場に作ってあり、とても楽しかった!です。しかも発泡スチロールに塗料を吹き付けた山ではなく、自然の草木が植えてあって、きれいな花を咲かせていました。



河童が碁を打っていました。さすが碁盤店の雛山です。
綾営林署管内の榧(かや)の木で作った碁盤は昔から日本一と評価されていて、愛棋家の垂涎の的です。
榧は硬くて丈夫な木ですが、榧の碁盤は碁石を打ったときに跳ね返すのでなく、柔らかく受け止めてくれるといわれています。
綾の背後に広がる日本一の照葉樹林帯の中に立っている常緑針葉樹の榧は、太陽の光を照葉樹に取られ、わずかずつしか成長できません。そのため木目は細かくしっかりした木材になりますが、碁盤が作れるほどの大木は稀にしか発見されません。この数年間は、綾営林署が榧の大木を管理していますが、一本も切り出されていないそうです。
(現在碁盤の多くはカナダなどからの輸入材を使っています。)
綾の榧材の芯の部分を使った柾目の榧碁盤だと数百万円はするようです。

また、碁石は日向市のお倉ゲ浜で獲れたはまぐりで作ったものが日本一です。ただ、昔はきめ細かな美しい縞目で、貝の厚さも2センチ前後の天然のはまぐりが獲れていたのですが、もう絶滅したようです。
(現在碁石はメキシコなどから輸入したはまぐりで作られています。貝の縞目が太いですが、実用上は全く差し支えはありません。)
昔獲れた厚手の日向はまぐりの碁石はもう二度と入手できないので、今となっては幻の碁石となりウン千万円の値打ちがあるようです。

この河童たちは、碁の手ほどきをしてくれたおじいちゃんが使っていた綾の榧碁盤(昔はまだ安かった)を使って、碁を打っているのでしょう。
(もちろん、このような最高級の道具を使わなくても、碁の面白さに変わりはありません。)



作業場内には、榧などのの盤材が置かれています。榧は碁盤に仕上げる前に、ひび割れを防ぐため板の厚さによりますが約10年間ほど自然乾燥させるそうです。
木材を使ったいろいろな工芸品も陳列されていました。



お雛さまが集まってお供えの餅を作っています。
正面左では臼で餅をついているようです。



薪(山芋ではなさそうですが)を集め、魚を釣っています。
中央に寝そべっているのは白い牛?でしょうか。



ここでは御幣(五平)餅にタレをつけて焼いています。



餅を串にさして御幣(五平)餅を作っています。



野原も丁寧に作ってあります。兄弟4人が中心になって企画を考え総勢15人で作ったそうです。



綾の女性は自然と共生するやさしい「山の神」に育っていくのでしょうね。



復興を願った祈りが続いています。
作った人たちの熱意が感じられるすばらしい雛山でした。


   

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